山行名 屋久島黒味川メンガクボ遡行
入山山域 屋久島 黒味川メンガクボ遡行〜安房川南沢下降
山行日 1999年10月8日(金)〜10月11日(月)
メンバー 西村正也5 香川浩士2

行動記録

 私自身、屋久島最難関といわれる宮之浦川をはじめ主要河川を数多く遡行した。3年生まで精力的に屋久島の沢を遡行していたのだが、1997年瀬切川を遡行したあたりからだんだんと興味が北アルプス、東北の沢のほうへ移り、めっきり屋久島の沢を遡行することがなくなってしまった。
 この夏は東北の沢、北海道の山を登り、再び屋久島の沢がやりたくなった。他の地域の沢をやると屋久島の巨石のゴーロや花崗岩のツルツルの側壁に囲まれたゴルジュが特殊なものと感じる。屋久島の黒々とした森の中を再び彷徨ってみたいと思い立った。まだ私の触れていない大きな沢で遡行意欲のあるのは黒味川1本だった。元気バリバリの2年生香川と2人で黒味川を遡行することになった。(西村)

1999年10月8日(金)曇 宮之浦港(12:40)―黒味川入渓(15:30)―ビバーク(16:40)
 前半の縦走終了後、太田五雄さんのお宅にお世話になる。大谷さんと入れ替わりに香川が昼のフェリーで屋久島入りする。太田さんの知人で熊本大の研究者が西部林道まで乗せてくれるかもしれないと期待して待っていたのだが、淀川に行くということでがっかり。肩を落としていたらマグロ船の船乗りで太田さんのところで知り合った成田さんが栗生まで乗せてくれた。途中の平内の断崖絶壁や湯泊のガジュマルの巨木、栗生小学校など寄り道をしてくれた。もう18回も気が狂うような回数、屋久島に来ている私だが、山のこと以外は全然知らない。麓のことももっと調べてみたくなった。黒味林道の工事現場で降ろしてもらう。成田さんと硬く握手をして出発。橋から入渓。いきなり砂防ダムに行く手を阻まれる。左岸から巻く。延々と巨岩のゴーロが続く。今日は1時間で行動を打ち切る。

10月9日(土)晴れのち曇 起床(5:40)―出発(6:40)―P1203mに上がる沢出合(7:40)―ケヅメ入口(8:30)―ケヅメ抜け(12:10)―P1281mに上がる沢出合(13:00)―七五沢出合(14:30)―ビバーク(16:40)
 朝40分寝坊。全然寒くなく良く眠れた。出発してすぐは簡単なゴーロが続く。左から沢が出合いそれからしばらく行くと、軌道跡を見る。前方に滝8bが現われ、S字に曲がりくねったゴルジュ、ケヅメの難所が始まる。このケヅメの突破を目論む米沢部長のために写真を撮りながら巻くことにする。ここは左岸を巻くと大変厳しい藪こぎになると太田氏からアドバイスを受けていたので、迷わず右岸を巻く。樹林の中も巨岩の迷路になっている。左壁は美しい花崗岩のスラブ。一度沢に戻るも再びゴルジュに滝が懸かっておりまたも右岸の尾根を越えるように巻く。そこから懸垂20b、ザイルいっぱいで沢に降り立つ。よく香川は降りたなあと2番手で降りてそう思った。実は何も考えていなかったのかもしれない。ゴルジュに巨岩が挟まっており手を焼く。ショルダーを使い、きわどく巨岩を乗り越すとまた前方に滝があり、今度は左岸を小さく巻く。右に大きく屈曲している所にも滝があり、滝壷を泳いで香川が偵察に行く。ここの左岸はスラブが大きく出ていたので、遠回りしても右岸を巻くことにする。沢に降り立つとしばらくはゴーロが続き、大きな滝壷とゴルジュがある。右岸を巻いていると軌道跡があり、これは楽だと軌道跡を辿るとトンネルがあった。トンネルをくぐって尾根を何の苦労もなく抜けた。軌道跡はゴルジュの所で完全に橋が落ちて切れていてさらに大高巻き。沢に降り立つとすぐに左から沢が入り、ゴーロと小さい滝が延々と続く。七五谷を右に分けてさらに直進するが、目標のメンガクボには到達せず、左岸の樹林帯でビバーク。こんな奥地なのに伐採されていて少し悔しい。夜、木々の間から見える星空がきれいだった。

10月10日(日)晴れ一時ガス 起床(6:00)―出発(7:15)―メンガクボ出合(8:00)―林道(9:30)―遡行終了(14:30)―花之江河(16:00)―ビバーク(17:00)
 予想に反して天気がよい。快晴だ。出発してすぐメンガクボ出合に着く。モチヤマ谷(本流)のほうに立派な滝15bがあるので、分かり易かった。メンガクボに入ると急傾斜で沢が上昇していてそこに巨大な岩が挟まっている。思ったより厳しそうだ。入ってすぐシャベルカーが転落していた。木が挟まり、岩で埋もれかける人工物は、なんだか異様で人間の愚かさを露呈するモニュメントに見えた。狭いゴルジュに巨岩の挟まった滝が3つ連続しておりどうも登れそうにないので、一度5b懸垂下降して少し降りて右岸を高巻く。途中から伐採地に入り込みトゲのある植物がうっとうしい。林道に架かる橋の下をくぐり、砂防ダムを左岸から巻く。延々と小滝と巨岩の乗越に追われる。傾斜がなくなったと思うといきなりナメラの河床に変わり、穏やかな流れになる。ガスの中で屋久杉の森の中を穏やかに流れる沢はとても幻想的だった。いくつか支流が入っているが、本流を忠実に詰めるとすごく藪こぎが長くなるらしいので、右から入る支流を登る。これからはルートファインディングと神のおぼし召し、そしてひたすら藪をこぐだけだ。天気もよくなって、藪こぎもそんなに厳しくない。あらゆる藪こぎを経験したものにとっては、ちゃんと足が地面に着く藪こぎなど何でもないことだ。もう沢の水が完全になくなったところで二手に分かれて偵察に出る。1分も行かずに西村が湯泊歩道を見つける。やるじゃん俺たちと思った。いつも適当な私にしては完璧過ぎるルートファインディングであった。データロー岩屋は近くに水場はあるが、あまり住み心地がよくなく、泊まるのはやめて花之江河へ行くことにする。花之江河は予想通り連休で人がいっぱいで、おじさん達に明日の天気を聞く(ラジオが浸水して故障したため)。台風は消滅し、明日の天気も上々と言う事だった。間違っても満員の淀川小屋など行くつもりはなく、石塚小屋方面へ行き安房川南沢を下ることにした。途中から廃道の看板がありどこまで道があるかわからないが、廃道を行ける所まで行く。支沢を渡るところで日没が迫り、ビバークした。

10月11日(月)晴れ 起床(5:50)―出発(7:10)―南沢(8:00)―奥石塚沢出合(10:10)―安房川北沢出合(13:35)―楠川歩道入口(14:00)―楠川歩道入口発(14:50)―辻峠(15:30)―白谷雲水峡(16:30)
 寒い。夜は冷え込んだ。シュラフカバーだけでは寝られたものではなく、1時間おきに起きる。星空が天の川まではっきり見える。今日も快晴だ。ラーメンと紅茶を胃袋に入れると少し暖まってきた。昨日同様に旧安房歩道を行ける所まで行くことにする。最初は斜面を水平にトラバースするように道がつけられているが、ある程度行くと沢に下るように道がつけられている。このあたりで道を見失い沢に入る。安房川南沢は沢が広くゴルジュなどはないが、巨石が多く滝が至る所に懸かっている。滝を上から眺めて行けるかどうか判断する。3bくらいの滝ならギリギリまで粘って飛び降りるという荒技もある。大きな滝の淵は遠回りすれば巻けるが面倒なので泳いで下る。この場合、端のほうを泳ぐと滝に戻る逆の流れに妨げられるので、素直に真ん中を泳いで流されたほうが楽みたいだ。左岸から10bの立派な滝で支流(右谷)を集める。巨岩のゴーロを滑り降りたり、飛び降りたりして進む。香川はズボンのお尻が大きく破れてケツが丸見えだ。あれで町を歩いたら犯罪だろう。ようやく北沢と出合う。しばらく進んで楠川歩道の入口に到着。西村はせっかく釣り道具を持ってきたので、ヤマメを狙う。しかしド快晴の条件ではヤマメは餌にピクリとも反応せず、全く釣れない。釣りは諦め、気をとり直して楠川を目指して突っ走ることにする。辻峠を越えたところで偶然、成田さんと女性2名に出会った。帰りも乗せてもらえることになって白谷雲水峡の駐車場で待っておいてくれとのこと。香川、お尻の破けを隠しつつ女性の前を突っ走る。白谷雲水峡を見物しながら駐車場に着き、栗生からの沢から沢への縦断が終わる。(西村)

感想
西村正也 農学部4年
 久しぶりに屋久島の新たなる沢をやることになった。本当に久しぶりにどきどきした。どんなに簡単な沢でも初めてやる所はドキドキする。ゴルジュの先はどうなっているのか。どんな滝が待っているのか。予想もつかぬ展開が沢登りの面白さかもしれない。
 黒味川は、中級くらいの沢で永田川より少し難しい程度の沢であった。他の沢に比べて極端に奥地まで伐採が進んでおり、原生林が少ないのは残念でならない。しかしケヅメのゴルジュとメンガクボのナメラは一見の価値があった。
 今回は初めて沢から沢へ屋久島を縦断するコースを選んだ。安房川南沢も黒味川以上に伐採が進んだ沢である。もうほとんどすべての木が切り尽くされ二次林になってしまった。しかし、切り株からどんどん新たな植物が着生しているのを見ると屋久島の植物のたくましさには驚かされる限りである。
 今回の山行ではあえて香川が先頭に立ってルートファインディングすることが多かった。なかなかうまくルートを選んでいた。彼の成長に驚かされることもあったが、まだまだ足らない所も多かった。具体的に書くときりがないが、もっともっと経験を積んで欲しいと思う次第である。

香川浩士 教育学部2年
 今回は僕の屋久島における沢デビューの山行であった。一言でいうと「素晴らしいもの」であった。具体的には、天候の良さ、沢の自然の素晴らしさ、そして何より焚き火を前にして西村主将と山のことや部のことを話したこと。このようなことです。
 西村主将には、沢を進むときのペース、入ってくる支沢の確認、地図の読図力、湿った木を使っての火の起こし方などなど…本当に多くのことを教わったような気がします。屋久島に対する新しい概念(沢)も僕の中に明確な形で生まれ、これからの夢もたくさん想うことができました。今、心から感謝しています。
 2人きりの沢行きは、その両名のリズムが合ってくると素晴らしいものになる。4日目となると、キジ撃ちtimeまで同じになってくるから大したものだ。休憩をとるタイミング、素晴らしい景色を前に想うこと、このようなことすべてが西村主将とピッタリ合っていることを感じながらの遡行であった。僕はこの「黒味川遡行、安房川南沢下降」の秋合宿を1年の時の夏山と同様、きっと一生忘れないだろう。

〔反省・今後の課題〕
 地図を忘れるということはどうしようもないことでした。ミスというより屋久島を前にして自分の精神の怠惰さを叩き直さないといけないと思いました。
 地下タビ+ワラジスタイルは、やはり沢靴の機能にはかなわないと思った。苔のついた所ではフリクションが良く効いたが、このスタイルで屋久島の沢をやるには、よほど慣れていて、自分のスタイルについての信用を形成していなければ、履くべきではないだろう。
 沢は、危険が瞬時に襲ってくる所だと思った。高さが1.5bとかの岩の上でも足を滑らせて落ちて足を折ったりすると一気にピンチだろう。常に気を抜かないでいることが大事だ。後、一瞬でどのルートを取るかの判断力、また支沢を地図と照らし合わせて現在位置を的確に捉える読図力、これらの力も必要だ。今回は西村主将という実力者がいたので、この辺についての不安はなかったが、僕が今後、主体的になって屋久島の沢に向かうとき、充分に訓練、研究をして沢に臨まなければならないと思う。その他、クライミング技能の向上、精神力の鍛錬など、リーダーメンバーとなる3年生に向けてやらなければならない課題は多いと思う。本当にいろいろ学ばせていただきました。ありがとうございました。
 今後、屋久島の沢においては中級の沢を2本か3本やり、屋久島三大険谷ヘ、そしていつの日か宮之浦川を遡行してみたいです。これが現時点での僕の夢であります。以上。
(香川浩士)


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